一九八六年に世界文化遺産に登録されたその石造建物遺跡は、アフリカ南部のジンバブエという小さな国にある。「グレート・ジンバブエ」と呼ばれる高さ十メートルの石の城郭によって囲まれた石造建築による要塞遺跡は、八世紀にバントゥー系民族によってつくられた。百二十メートルの小高い岩山の上に、自然石を巧みに利用し、その間を石の壁やテラスでつないで築かれた遺跡は、南部アフリカの大地にかつて広大な支配力を及ぼした王国、グレート・ジンバブエの象徴であり、王が政治・宗教を司った場だとされている。バントゥー系民族は、石を切り出す道具をもたなかったが、実にユニークな方法で石材を採取した。まず、焚き火を岩盤の上で二日間燃やし続け、朝がた温度が下がったころを見計らい、焚き火をすばやく取り除く。熱膨張した石が急激に冷やされることによる温度差で層状の割れが起こる。こうして岩盤から石を剥ぎ取っていた。このような切り出し跡がいまでも無数に残っている。ジンバブエとは「石の家」という意味でもあるが、この石こそ御影石である。御影石は花崗岩のことで、石英、長石に少量の黒雲母などを含む粗粒状の岩石であり、硬く耐久性にすぐれている。身近なところでは、寺院の石段などによく使われている。グレート・ジンバブエの石の家は、小口積みという煉瓦造でよく使われる方法で石を積んでいる。石と石を半分ほどずらしながら高く積み上げると、上からの荷重で壁が一体化するという、積層構造の特徴をうまく使っているのである。
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